角田山のふもと、カーブドッチさんの近くにあるプライベートワイナリー「フェルミエ」さんの広報誌「フェルミエ通信」を制作させていただきました。
フェルミエさんの経営はHonda Vineyards & Wineryというカッコいい名前の会社で、その名の通り社長の本多さんと奥さん、お子さんの本多さんご一家が経営する、本当に手作りのワイナリーです。
フェルミエさんのワイナリー&レストランは、カーブドッチさんのすぐ近くにあり、敷地の境界も良く分からない位です。今回とあるお客様の紹介でこのようなご縁をいただくことになったのですが、この場所のせいで私も当初誤解していたくらい、フェルミエさんは「カーブドッチさんの別ブランド?」的に見られてることが多いのではないでしょうか。
それは間違いで、経営や資本的には関係なく、完全に独立した別のワイナリーだそうです。ただ、カーブドッチさんの落社長が提唱する、あの一帯のワイナリー誘致計画の一環として開催された「ワイナリー経営塾」に、本多夫妻も参加されています。このあたりは雑誌『Winart』No.52・2009年9月号に詳しいです。(レストランにも置いてあります)「フェルミエ」ワインは、一つの独立したワイナリーで醸されています。そして今後も、この地区には別の独立したワイナリーが続々と登場するそうです。
本多さんは、家族経営ならではのフットワークの良さでさまざまな試行錯誤を重ねられています。ある一つのロットを、たとえば半分はぶどうの皮をこれだけ混ぜて、半分はその倍にして、というような小ロットならではのきめ細かな実験を重ねて、よりよい味作りを目指してます。また、お酒作りに大切な酵母との対峙は時間を選びませんが、そういった深夜にも及ぶきめ細やかなワインの手入れも、家族経営だからこそと言えるかも知れません。
2010年からは、畑を作った当初から丹念に育てていた、念願の自園産ぶどうで醸造したワインがいよいよ一般出荷を始めています(カベルネ・フランとアルバリーニョ)。このうち「アルバリーニョ」というスペインの白ワイン用の葡萄は、恐らく日本では初めての栽培かも、と仰有る位の珍しい品種で、本多さんが、新潟のこの地の風土・食との相性を見極め採り入れた品種です。今後が楽しみです。
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弊社は現在2社のワイナリーさんとおつき合いさせていただいていますが、それぞれに高い志を持って栽培・醸造に取り組まれているのがひしひしと伝わってきます(どちらも醸造をやられているのはお一人です)。ワインに詳しくない私は当初、「どのような味を目指しているのか」のようなトンチンカンな質問をしていたこともありましたが、おつき合いしていくにつれて少しずつその勘違いが分かってきました。
葡萄を作られる方も、醸造される方も、そんな事はあまり考えていないようです。大切なのは、その土地で最良のものを育て上げること。自然の力をお借りして、土地のテロワールを活かして、新潟のその土地の匂いが現れるようなワインを造ることなのだと思います。
葡萄の出来は本当にさまざまで、ワイナリーの違い、土地の違いはおろか、畑の中のある一ヶ所と、傾斜や日当たりの違う別の一ヶ所では、味が全然違ってしまう位。さらににその年の気候条件と醸造方法が加わる訳ですから、ちょっと信じ難いくらいに複雑で、奥が深いものです。ある時は宝物のようなワインとなり、ある時はちょっと…という出来になってしまうこともあるでしょう。それだけ面白くやり甲斐のある仕事を、結構な少人数で行うことができます。
ワイン造りがヒトを魅了し、時には人生まで捧げてしまう理由の一端が、分かるような気がします。
ワインを造る人が何かの味を目指してる訳ではないようだ、と書きました。もちろん出来上がるワインも年や場所・品種によって本当にさまざまな味わいを持ちます。大切なのは、我々がその「さまざまな味」を「楽しめる環境」が、存在することだと思います。新潟の日本酒のように色んな味を、それぞれの酒蔵の味をはしごできるくらいの環境があったら、どんなに楽しいことかと思います。
まだまだ日本の中では「ワイン産県」とは認知されていないほどの新潟の産量ですが、量ではありませんよね。これからどんどん素敵なワイナリーが立ち上がって、地元で丁寧に醸されたたくさんの種類の美味しいワインを楽しむことが、今よりもっと普通に、我々の間に広がっていったらと思います。そのためのお手伝いが少しでもできるなら、何よりの幸せです。
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※『フェルミエ通信』は、DM発送用に制作されたものですので、配布はしていません。フェルミエさんの店舗には置いてありますので、ご来店の上本多さんにお問合わせください。フェルミエさんの店舗(11:00〜17:00・レストランは11:00〜16:00LO)ではワイナリー見学や試飲などもできますので、興味のある方はどうぞ。ちなみに建物は亀貝の自邸もお願いしている、伊藤純一さん(→HP)の手によるものです。