小林章さんトークイベントin北書店「フォントのふしぎ」
去る11月9日に、北書店にて
小林章さんトークイベント「フォントのふしぎ」
を開催しました。
トークも、その後の懇親会も大いに盛り上がり大成功だったと思います。
小林さん、お忙しい中いつもお時間をとっていただいて、本当にありがとうございます!
→小林章さん公式ブログ「デザインの現場 タイプディレクターの眼」
北書店で開催しよう、というのは実は当初から會津八一記念館の湯浅氏や北書店・佐藤店長と相談していたことなのですが、当時は未だ『フォントのふしぎ』が出版されておらず、タイミングとしても書店でやる意味があまり見出せずに先送りしていました。で、その間に開催した座談会(→レポートへ)や飲み会があまりに「濃い」内容で、しばらくこれでいこうよ、みたいな雰囲気になっていたのです。
小林さん、東京や大阪では帰国の度に講演会やWSを開催していますが、新潟ではまだそのような機会がありませんでした。ではいっちょうココらでどうでしょう?とオファーしたところ、快く了解いただいた次第です。
当初は(スクリーンが見える範囲でそれほどキツクない)50名ほどの定員で考えていましたが、Facebookで告知を開始後、2〜3日ですぐに40人近く予約が入ってしまい、これはイカン、と60名まで増やし、最終的には64名まで入場いただきました。Facebookページのみの告知でしたが、さすが!の人気です。
今回は書籍『フォントのふしぎ』の内容に合せ、デザイナーのみならず書体に関心のある一般の方達にも来てもらいたい、とのご希望だったのですが、フタを開ければやはりデザイン業界の方の反応が圧倒的に速く、7〜8割はデザイン業界の方でした。
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トークの内容についてざざっと箇条書きで失礼します。
録音でもメモでもなく亀貝の記憶です。小林さんが話されたニュアンスと違っている箇所・間違っている箇所など多々あるかも知れませんので、そのつもりで読んでください。トークの内容の殆どは小林さんの書籍『フォントのふしぎ』『欧文書体』『欧文書体2』でも述べられていますので、是非そちらを読んでください。『フォントのふしぎ』はどちらかというと一般向け書籍ですが、おそらくデザイナー向けである『欧文書体』2冊も専門書的なとっつきにくさは無く、読みやすくて楽しい構成。今回のような話も盛りだくさんです。北書店にありますので是非お買い求めください!
まず小林さんのお仕事の紹介。誰もが驚く「一日立ちっぱなしでPCに向かう」という独特のスタイルや、書体をつくる仕事、について等。
Macにバンドルされている欧文書体の話。ここからどのように書体を選べば良いのか。そもそも書体はどのようにして選べば良いのか。例示。
じゃあ実際に選ぶ際に「バンドルフォント」はタダだから安っぽいのか?実際に高級ブランドのロゴでバンドルフォントを使ってるいくつかの例を紹介。バンドルフォントが安っぽい訳ではない。(そもそもバンドルフォントはフリーではなく、書体メーカーがAppleにライセンスしているものなので、ユーザもmacの代金としていくらかは払っている)
このバンドルされている書体群を見ていると何が分かるか。グループに分けた場合のバランスのこと。
書体を選ぶ基準は?
書体にはそれぞれ出自や歴史などがある。だけどそれを優先して選ぶべきだろうか?実際これらの書体の「見た目」から何を感じる?例示。その多くは誰もが共有して持っている「イメージ」のはず。
自分が制作しているものがどんな内容を伝えようとしているのか、どんなイメージを持たせたいのかを考えれば、自ずと答えは出てくるだろう。
いわゆる「お勉強」的な出自や歴史などのデータも勿論大切だが、目的と見た目で選ぶ方が大切。
書体には民族性や国のアイデンティティがあり、用途によってそれらを意識しなければいけない?
前回の座談会でも、小林さんの連載などでも語られている、これらの都市伝説の話について、解説(内容ダブるので、詳しくは前回レポートを)。
フォント自体の国民性や民族性などは世界的には殆ど意識されてない。だから基本は見た目で選んで良いのだが、その中でも守らなければならないルールについて。イタリック体の使い方など(イタリックは日本語で言えばかなに対するカタカナのような意味合い。使い方には「意味」がある)。日本人が良くやる全部大文字の固有名詞は意味が読みにくい上に意味が通じない。マヌケ引用符“”はダメ。ちゃんとした引用符“”を使う。(亀貝注:アプリでは設定も必要。「マヌケ引用符」で検索)
文字詰め(文字間)の話。大文字は空けて良いが、小文字は基本空けない。
文字・書体教育の話。日本ではデザイン系の学校で系統立った文字・書体の教育がない。欧米では基本教育として行っている。残念。
書体デザインの話。オブリークとイタリックの違い。本文と見出しに使うべき書体の違い、など。コーポレートタイプの話。
質疑応答で出た質問に答えた、今の職業に就くに至ったきっかけの話。山の下小学校で見た雪。降る雪が背景によってグレーから白に変わる。そのコントラストを不思議に思い、見つめていた。
フォントは白みと黒みのコントラスト。フォントデザイナーは文字の黒だけでなく、それによって生まれる白の空間をデザインする。
絵が好きで学校行事のポスターをよく作っていたが、どんなに絵が素敵でも、そこに載せる文字が美しくないとポスター的にはかっこよくならない、と小学生の時に気付いた。
などなど。質疑の後、サイン会を経てトークイベントは終了しました。
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北書店の佐藤店長が、いわゆる素人の立場から先行して質問をしてくれたおかげで場の雰囲気を後押ししてくれ、普段こういった新潟のイベントではあまりないほどの質問が飛び交い、盛り上がりました。小林さんも「質問がいくつも出て良かった」とおっしゃっていました。
その後、場所を東中通「ちくら」に移し、希望者十数名で小林さんを囲んでの懇親会に。
小林さん、北書店からこのお店のトイレまでで既に数カットのサイン文字を撮影(笑)。特にちくらのトイレの書体には感動していたようです。(確かに良かった!)
懇親会は最初から自己紹介タイムに。トークイベントのみならずこのような会に参加するだけあって、皆書体へ何らかの思いがあります。その話が面白い。前回座談会にも参加したYさん(デザイナーではなく一般事務職の女性)はその後欧州旅行をした際にルーブル美術館に寄り、絵の題名の中でおかしなヒゲのある「J」を見つけ、撮った写真を公開。それを見た小林さんは、「それ、たしか自分も撮ってたな」と(笑)。
その「J」が何故そうなるかを、(氏の書籍でもお馴染みの)平筆に例えた2本のペンで再現して説明します。
一目りょう然でした。
小林さん「これ、たしか○○の絵だったよね?」
Yさん「いや、絵の方は覚えてないです…」
一同爆笑。
こんな人達との書体談議ができる。滅多にない機会。
その他ブログには未だ書けないようなお楽しみの話もいくつか。講演会など公の場では話せない、こんな話を小林さんとできるのも、新潟ならではの特権でしょうね!(お国自慢)
大満足の一日でした。
小林章さん、北書店の佐藤店長、會津八一記念館の湯浅氏、フライヤーデザインをしてもらった寺田氏、現場のお手伝いをしていただいた座談会仲間の皆様、そしてご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。
今後も楽しみな企画の種が生まれています。
次の機会をお楽しみに!!
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懇親会の後は、なんと北尾トロさんが来ていた北酒場(北書店が酒場に変わる日)に速攻で参戦しました。久し振りのニイガタブックライトメンバーと楽しい酒盛りをして夜中にアレまぁ…となるのですが、
それはまた、別の話。(王様のレストラン)