本当に残念です。
新潟市は、12月としては20何年ぶりかの大雪に見舞われています。道路はマヒし、会社に来ても1時間以上雪除けしなければ駐車場にさえ入れない、というような日が何日かありました。スタッドレスに履き替えるタイミングを見失った我が社の社用車は、無残にも巨大な雪だるまと化しています。
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そんな大雪が、ちょうど積もり始めた日でした。家に帰る車中で、北光社の佐藤店長から電話がかかってきました。
彼とは2週間ほど前に、ごく少人数でにいがた空艸舎の打ち上げ飲み会をやったばかりでした。その時は確か5〜6時間ほども飲んで話していて、彼とまともに一緒に飲んだのは初めてで、みんなの学生時代の話やらで随分盛り上がったのを憶えています。
にいがた空艸舎では新津の英進堂の諸橋店長と座談会をやっていただき、「ライバルが存在することの意義」について熱く語っていただきました。本屋さんのことを一生懸命に考えている彼と知り合うことで、今の本屋のさまざまな問題や可能性について考えるきっかけができた。空艸舎を通じて相方も仲良くなり、お店に行けば3歳のムスメまで可愛がってもらいました。「空艸書店、ふたたび」では、子供のころからお馴染だったあの北光社で企画棚展示をやらせていただいた。
本当に、これからが楽しみだった。
そんな彼から来た電話は、しかし残念なお知らせでした。律義な彼らしく「電話では話したくなかったんだけど、いなかったんで…」(亀貝家は先週末新潟にいませんでした)と切り出し、次に語られたのは、まったく寝耳に水の北光社閉店の話でした。話が出てからしばらく、色々関係者の方も立ち回って頑張ったのでしょうけど、遂に決定してしまったと。
本当にショックで、帰ってから話した相方も相当にショックで、しばらくは何も話せない位でした。
新聞の記事にもありましたが、閉店の直接の原因は、近年の売り上げではなく、支援してくれていた取次の方針転換でした。いっそうやるせないです。
しかしもう決まってしまった。失うものは果てしなく大きいのですが、今後を考えなければいけません。前向きに。
そして個人的にやりたいのは、惜しまれて無くなってしまったこういうお店のことを、忘れずに、いつでも思いだせるような記録というか、媒体というか、そんなものをどこかで作りたいと思っています。
無くなった時は本当に悲しんでいても、2年3年経ったときに、ふとそのお店のことをすっかり忘れている自分に気づく、あの瞬間。別に普段は忘れていてもイイんだけど、その佇まいを思いだせるような、きっかけになるような、そんな存在が欲しいと思います。それは決して「昔は良かった」ノスタルジィのためだけではなく、新しいお店やまちの方向性を考えるヒントになって欲しいと思うのです。
今年は本当に色々あった年でした。惜しまれるような良いお店もどんどん消えていきました。景気の流れなんて大仰なことは自分にはさっぱり分かりませんが、自分にできることは、できるだけ消費に気を配ることだと思っています。良いと思うものを購入する。良いと思えないものは、買わない。限りあるお金は、支えたい人やお店に使う。そして自分も支えてもらえるような仕事をしていかなければならないと切に思います。
「空艸書店、ふたたび」のコーナーは年が明けてからも継続して展示される予定です。また残り1ヶ月、最後を飾るディスプレイが登場するかも知れません。皆さんぜひ見納めの北光社にお出かけください。
最後になりますが、今回の閉店の話が出る直前に行われた、佐藤店長のインタビュー記事を紹介します。ミシマ社という出版社が、全国のオススメ書店を訪ねて紹介するコーナーで、北光社が取り上げられました。空艸書店のラインナップがどのように考えられて選書されたかが語られていて、とても面白く、そして空艸舎スタッフにとっては切ないインタビューとなりました。