Column代表亀貝のコラム

にいがた空艸舎〜その3〜「空艸観光」終了しました。

date - 2010.10.26

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今年で3回目になる「にいがた空艸舎」が無事終わりました(10/10〜11)。事前に何も案内できなかった余裕の無さが恥ずかしい限りです。ご来場いただいた皆様ありがとうございました。おかげさまで楽しい2日間を過ごすことができました。

にいがた空艸舎公式サイト

今回の「空艸観光」は、「観光」という言葉を借りながらも、一般的な「観光」とは違う意味で、
「想い出に残る旅の記憶って、どういう時だろう」
「その土地を旅する人が、本当に欲しい情報ってなんだろう」
そんな話から始まり、最終的には
「その土地を好きになるって、どういうことなんだろう」
ということを、空艸舎的に考えてみようと思いました。028.jpg


想い出に残る旅の記憶。
もちろん有名な観光地に行って、その荘厳な建物や雄大な景観に心奪われ、印象に残る旅もあると思うのですが、色々旅を思い返して記憶をたどっていくと、結構思い出すのは、旅先の「人」に触れた記憶じゃない?と思ったのです。

たとえば旅先で訪れた、ガイドブックにも載っていない小さな定食屋さん。そこのおばちゃんとふと会話が始まり、たとえば普段のオススメの、近所のお店を聞き出すことができた時。たとえばその土地に住んでいる友人から、地元の人しか行かない小さなお店や、景色の良い普段の散歩コースに連れていってもらった時。その土地で暮らしている「人」の、普段の暮らしを垣間見れたり、感じたりすることができた時。

そんな時に旅の喜びを感じたり、また行きたいと思ったりするのではと思いました。「人」って、意外と大きな要素じゃないかと。

「観光」と銘打ちながら、勿論それは逆説的なタイトルで、いわゆる「観光」ではない、私たちが本当に求めている「観光」情報を共有したいと思っていました。その情報の中心にあるのが「人」だと思ったのです。

「空艸観光」では、スタッフの中から9人の人達に、普段の自分のお気に入りをコースにして紹介して欲しい、とお願いしました。「人にオススメする場所」ではなく「自分のお気に入り」を紹介して欲しいと。コレ、観光情報を聞く際に良い質問の仕方だそうです。「オススメは?」ではなく「あなたは何処が好き?」という訊き方ですね。

【ここ以下の写真はすべて内藤雅子カメラマン撮影です。感謝!】
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紹介していただいたスタッフの職業はさまざまですが、30代前後の女性が多かったです。皆さんほとんど今回のような「自分のお気に入りを大勢の人に紹介する」経験は、これまでしたことがありません。というか、そんな場所は他に見ないし、私も知りません。

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でも、聞きたいのってそういう情報じゃないですか。そこに住んでいる人だからこそ知っている場所や食べ物や景色、におい。特に年代や趣味が似ていれば聞きたくなると思うのです。

今回、9人がそれぞれのオススメルートをお客様に直接話して、紹介する時間を1日1回もうけましたが、興味深く聞いてもらえていたようです。入場の際に特製メモ帳をお渡しし、そこに気になる情報をメモしていってくださいとお話したのですが、メモをとって聴いていただける光景もあちこちで見られ、本当に嬉しかった。(特製メモ帳は横浜の竹内紙器さんのご協力があって、張り箱に使う素敵な紙で製本していただきました。ありがとうございます)

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今回紹介したルートのMAPを、コピーしてお客様に配るという方法もありました。でもそれは企画の途中でやめることにしたのです。お客様に配ったら、それはそれで便利なのは間違いないですけど、きっとお客様はそのMAPを集めるだけで結構満足しちゃうだろうし(私ならそうでしょう)、それは(配る事は)別に空艸舎がやることではないなと。

それよりも、直接話すことで得られる情報の温かさというか、何というのだろう、立体感のある情報とでもいうのでしょうか。それを、あの建物の下で「共有」することこそ、自分達のやりたいことだなぁと。自然と落ち着いたのでした。
(※MAPは後日WEBサイトからダウンロードできるようにします。ご安心ください)

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今回オススメルートを紹介していただいた9人の方は、魅力的な「それぞれの新潟」をお持ちでした。そして、我々誰しもが「自分のお気に入りの新潟」を持っていると思います。だけど普段は遠慮して「私のお気に入りなんて…」とお蔵入りしがちだったり(人に言うほどのモンじゃないですよ、とかね)、もしかしたらその存在にさえ気づかないことさえ、しばしばあるでしょう。(「新潟なんて、特に案内する所ないよね〜」って言っちゃっていたの、思い当たりませんか?)

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今回オススメルート案内の他に、新潟市内の巨大立体地図にオススメの場所を付箋で貼った展示や、全国47都道府県の地図を一部屋に全部貼り、それぞれの県のオススメスポットを紹介する、ということもやりました。そのいずれも、お客様も付箋を書いて、追加できるようにしました。

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自分の「普段のお気に入り」が加わって、またコースが豊かになったり、お互い紹介しあったりして、1つ1つの個人のお気に入りは小さくとも、それを繋げていくことで素敵な「観光案内」体験になるのではないか。

そして、この共有体験(他人に褒めてもらったり、気に入ってもらったり)がきっかけになって、遠慮していた「普段のお気に入り」の新潟を、人に教えてあげるようになって欲しい。

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きっときっと、教えてもらった相手は喜ぶと思いますし。そしたらまたこっちも嬉しくなって、もっと紹介したくなります。さらに紹介する場所はないかと、調べるようになります。そんな体験のきっかけにしたかった。

それって自分の住んでいるこの土地を自然と好きになることに、誇りを持つことに繋がると思うからです。

あとこれはトークショーで話したことなのですが、観光のポイントって1つは「おせっかい」。旅先で親切に「おせっかい」された体験って忘れられないもの。ひょっとしたら次に自分がおかせっかいすることにも繋がり、また「おせっかい返し」してもらえる。「おせっかい」を始めることで観光、というか旅が、良い風に廻っていくこともあるんじゃないかと。皆の小さな小さな「おせっかい始め」のきっかけが生まれると嬉しいなぁとも思いました。

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【注】
お客様に地元を紹介したり案内したりする時に一番大切なのは、相手の情報をできるだけ得ることだそうです(エフスタイルが言っていました)。特に普段のお気に入りを紹介することは、紹介する相手が自分と似た嗜好を持っている場合なら問題ないでしょうけど、そうでなければ時にハズすこともあります。

今回の空艸観光は、あの場所に「にいがた空艸舎を目当てにやってくる人達」が、私達スタッフとある程度同じ嗜好を持っているという(これまでの経験からきた)想定があって、できたことです。
だから、決して大きな規模でできるものではないと思います。

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話は変わりますが、これまで2回の開催では、飲食部門である「みちくさ茶屋」が大盛況でした。大盛況は良かったのですが、そのために飲食のスタッフ(飲食店オーナーが殆どです)が何だか食べ物を売っただけで終わってしまった感が強く、その点を今回なんとかしようと、昨年から検討していました。

ちょっと説明を。にいがた空艸舎のスタッフには飲食店などのオーナーが何人もいらっしゃいますが、基本的にその方達は元々にいがた空艸舎で食べ物を売る為に参加されている訳ではありません。第一回目「エフスタイルの仕事」の企画時から、飲食部門はメイン展示を盛り上げる脇役としてスタートしていますし、今まで一貫してそのスタイルでした。(お客様には違う風に伝わっているかも知れませんし、その点反省することもあります)。

飲食の方々も、空艸舎の趣旨に賛同していただき、一緒にあの場で新潟の身のまわりのことを見つめ直し、共有し、「足は地面に、視点は空から(趣旨文より)」表現していくというこのイベントを一緒に作り上げてきたのです。

もちろん飲食が趣旨ではないということではなく、毎回テーマに沿った形で飲食部門のラインナップをお願いしてはいたのですが、あくまでメイン展示を楽しんでいただくための演出的な要素、の筈でした。

なのですが蓋を開けてみればやはりお客様にとって「食べること」へのパワーはすさまじく(私だって逆の立場だったらそうだと思います)、少し本末転倒気味になってしまっていました。飲食部門のスタッフは準備から忙しく、メイン展示に殆ど関われないまま当日を迎え、忙しいままにイベントを終えるというような事になってしまっていました。

そんな理由で、今回思い切って飲食部門をやめ、その代わり私たちのお奨めするものを外部から仕入れ販売する「空艸物産展」にチェンジしました。これまで「みちくさ茶屋」を切り盛りしていた飲食スタッフの一部も、メイン展示である「空艸観光」の企画に当初から参加し、当日はお客様の前で自分のオススメルートを紹介したり、接客をしてもらうことができました。

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結果、飲食店の方に、自店のものを販売せずに参加してもらう(どころか場合によっては他店の製品を販売してもらう)という不思議なことになりましたけど、こんなことが許されるのも元々の空艸舎のコンセプトに賛同して参加してくれたからこそ、です。「飲食やめようか?」という話になった時にすぐ「やめよう!」と言ってくれた飲食店オーナーの皆、ありがとう。やっぱり空艸舎って不思議だな、と思います(笑)。

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そんなこんなで、これまでで一番、スタッフ全員が一緒になってやり切った感のある回だったと思います。

「みちくさ茶屋」の吸引効果も大きかったでしょうし、天気などの関係もあると思いますが、第1回開催の入場者数350人から口コミで倍(750人程度)に増えた第2回の入場者数も、3回目の今年は初回レベルの370人強に戻りました。そのおかげでゆったりとお客様と会話を楽しむことができ、その意味では本当に良かったと思います。

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また、来ていただいた方のレスポンス率(アンケート記入の多さと内容)からも、皆さんかなり「空艸観光」というテーマに興味を持って来場していただいてる様子が窺え、あの空間の雰囲気もなるほどと思えました。来ていただいた方、最初はスタッフが多くてぎょっとしたかも知れませんが(笑)、コミュニケーションが目的のイベントなので、お客様とスタッフが同数でも良いくらいだと思っています。便宜上展示と言ってますけど、イベントのメインは「展示」ではなくそれをきっかけとした「共有」体験ですし、きっとこれからもそうだと思います。

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本当に、スタッフの皆にもお客様にも恵まれすぎるくらい恵まれているなぁと毎回しみじみ実感させられるイベントです。これからもできるだけ続けていきたいと思っていますし、あの、北方文化博物館新潟分館の屋根の下で生まれた繋がりが、この3年間を通して仕事やプライベート問わず、少しずつ新潟に根を張ってきている気がします。

今後ともおつき合いいただけましたら嬉しいです。皆様に心から感謝の気持ちでいっぱいです。
ご来場いただいた方、スタッフの皆様、北方文化博物館のスタッフの方々、伊藤勝也様、本当にありがとうございました。
来年も是非是非、よろしくお願いします。

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