世界に一つだけの花

大学にいると、就職活動をむかえた3年生くらいの学生が相談に来ることがあります。学校の先生は一度も就職活動をしたことがない。学校以外の場所を知らない人ですから、そんな人に就職の相談をしている時点で、失敗していると思う(笑)。

そういう時に彼らがぽろっとこぼす言葉に、「先生、私にしかできないことってあるでしょうか?」とか、「他の人にはなくて私にしかないものってなんでしょうか?」というのがあります。

他の人にはない自分の素質であるとか、そういったものを捉えあぐねて、ちょっと他人の意見を求めてくる。

この問いにだけはいつも、つれなく答えるようにしているんです。っていうのは、相談に来る人たちはまず会社への就職を考えていて。その中でいろんな悩みがあるんでしょうけど、「他の人にはできなくて私にしかできないこと」っていうのは、誰にでもできることや代わりのきく仕事を淡々と、あるいは一生懸命くり返していく中で周囲がだんだん「これはあいつに任せるといい」とか、「あいつなら失敗ない」と自然に認めていって、その時にはじめて「私にしかできないこと」が誕生するんですよね。

だから順番が逆だと思って。私にしかできないことがあるから、この仕事をするんじゃなくて、誰でもできることをくり返しているうちに、その人にしかできないやり方が生まれてきて、それをまわりが認める。

西村佳哲『自分の仕事を考える3日間』〜鷲田清一さんとのトークセッションより